接客中の一言で売上が変わります

ショーケースのケーキ

ある個人事業の経営者と、そのサポートをしている経営コンサルタントのやりとりを聞いていて、気になる事があったので、皆さんにシェアしたいと思います。

今からお話する内容は、「接客中の会話での気遣い(相手への配慮)」についてですが、「売上を上げる力」の大切な要素の一つです。以下の事例で自分ならどう受け答えするか考えてみて下さい。

繁盛店の接客サービスは常に相手の事を考えている

あるデパートの地下で、年配の男性客がお土産(プレゼント)用の洋菓子を選んでいるシーンです。

男性客が店員さんに「これは賞味期限はどのくらい?」と尋ねました。

店員さんは「この小さい方の商品は賞味期限が○○日です。」と答えました。

すると質問した男性はその洋菓子を買わずにその場を離れていきました。

(※店員さんはアルバイトらしき若い女性です。)

この売り場のすぐ近くにいた経営者と経営コンサルタントは、この一連の様子を見て「なぜお客さんは洋菓子を買わずに帰ってしまったのか?」についてお互いの見解を話し合います。

皆さんも、このやりとりで「洋菓子を売るためにはどんな対応が必要だったのか?」を少しだけ考えてみて下さい。

経営コンサルタントは「あの答えはないよね?」と店員さんの回答にダメ出しをします。経営者も「あれは気分を害しますね。」と。

年配の男性客が、若い女性店員さんに「小さいのを買う男」と思われたのが不愉快(ばつが悪くなった)で、プライドのようなものを傷つけられたのが「売れなかった理由」であり、この接客は「こちらの商品は賞味期限が○○日です。」が正解だったという話でした。

今回のケースでは、男性客が自分が欲しいと思っている商品に対して『小さい』というネガティブな言葉を使ったのが悪かったですね。という二人の結論です。

ある程度の接客経験があれば、「接客中はネガティブ(マイナス要素)になり得る発言は基本的に控える」と意識出来ている人は多いです。

この女性店員さんは、どの商品に対しての質問なのかを確認する意味も込めて、丁寧に『小さい』という商品の特徴を付け足して回答しただけであって、自分が相手のプライドを傷つける余計な一言を言ったとは思っていないと思います。(脱線しますが、似たケースで「安い方ですね」という店員さんも見かけます。)

端的に言えば、接客の基本的なことや相手の気持ちを想像する力が足りなかった。

この「相手への配慮の有無が、繁盛するお店と繁盛しないお店の差」です。

お客様の質問の真意を理解していますか?

売れる接客

皆さんも、この二人の見解に賛同しましたか?

実は僕はこの話を聞いて、「確かに相手への配慮は必要ですよね。」という思いと同時に「自分なら違う接客だったな。」と思いました。なんだか話がまとまらなくなりそうですが、自分の見解も述べておきます。

今回の話で違和感を感じた【ポイント】は二つあります。

  • 欲しかったお土産(プレゼント)の賞味期限が相手に渡す予定日より早かったのでは?
  • 質問に対してもっと深く掘り下げるのが相手への配慮なのでは?

「年配の男性=プライドが高い(見栄っ張り)」というイメージがあるのは頷けます。ただ、単純にお土産(プレゼント)にちょうど良いと思った商品が、渡す前に賞味期限切れになるから買わなかっただけで、「小さい方」という発言とは関係なく、あらかじめ他の候補があったのかもしれません。

質問は「賞味期限がいつか?」でしたが、その質問の裏には他にも色々な意味が含まれていると思うんです。

お客様は言葉の意味だけの「洋菓子の賞味期限」が知りたいのではなく、「プレゼント相手に喜んでもらえる商品を探したい」その気持ちの中で、「渡す予定日に賞味期限がギリギリ(もしくは賞味期限切れ)で失礼にならないか?」を確認したかったのだと思います。

例えば、販売員さんが「賞味期限は渡す日にギリギリだけど、美味しくて評判が良い人気商品で、美味しさの秘訣が新鮮さだから賞味期限が短い」という提案が出来たら、お客様が購入する確率が少しでも上がるはずです。

具体的に言うと、僕が販売員ならこの質問をきっかけに抑えるポイントは、おおまかにこんな感じです。

  1. いつお土産(プレゼント)を渡す予定でいるのか
  2. 賞味期限の短い商品と長い商品の違いについての説明
  3. その商品のどこに魅力を感じたのか
  4. 目当ての商品が賞味期限の条件に合わなければ他のおすすめ商品の提案

少しの会話をきっかけに自ら相談してくる(情報を隠さない)タイプのお客様であれば、どんな相手に渡すのか(シチュエーション)まで聞いて提案しても良いと思います。

仮にあらかじめ他の有力候補の商品があったとしても、この会話の中で親身になって相談にのる姿勢を感じてもらえば、信頼関係が築けて商品購入に結び付く可能性も高まります。

無意識に笑顔でこの上記の会話の流れをスムーズに作れる人は『売れる販売員』だと思います。

まとめ

商品を売るための接客

話をまとめます。最初の経営者と経営コンサルタントの話ですが、

男性客の「これは賞味期限はどのくらい?」という質問に対する店員さんの答えが、

この小さい方の商品は賞味期限が○○日です。」でなはく、「こちらの商品は賞味期限が○○日です。」が正解だった。

という接客では、繁盛店というよりは普通のお店だと思いました。マイナス要因を取り除いただけです。

普通のお店の販売員より一歩リードするには、一言の挨拶程度の会話からでも相手が何を考えているか想像してコミュニケーションを取る習慣付けが出来ていて、商品購入までのプロセスを自然体で作り出せるかがポイントになります。

×「質問」 → 「その回答」

○「質問」 → 「お客様の本当のニーズ」 → 「説明や提案」

もちろん些細な会話から無理やり売り込む流れにもっていくような押し売りになってはダメですよ。お客様がお店に足を運んでいる時点で、質問の真意を汲み取る(これが重要な本質部分)と自然と売上に繋がる可能性が高くなるという話です。

今回は販売員の接客についての話でしたが、これはそのまま飲食店のホールスタッフの接客サービスに当てはまります。お客様とのちょっとした会話の中に売上が上がるチャンスが隠れているので、日々意識してみて下さい。